=第五章= 3.武闘派神武が東征を開始した AD270頃~

1)神武は東に憧れた
天孫族の瓊瓊杵尊は、北九州勢(邪馬台国)の国内侵攻第三弾として、南九州勢力を支配下に置いた。瓊瓊杵尊だけを天孫族としたのは、後述の神武東征の正統化のためである。

南九州のやせた土地で育った神武は、饒速日の成功話を聞くたびに、東にある、緑あふれる新開の地へ強いあこがれを持っていた。
又、九州は争っている半島に距離的に近く、常に政情が不安定であり、更には縄文期の火山の大爆発による大被害を受けた危険な地であるという遠い記憶が、東征を後押ししたのであろう。

2)吉備で3年間も何をしていたか?
当時滞在した高嶋と吉備勢力(盾築遺跡付近)は海を隔てて対峙していた。
北部九州からの遠征軍勢では、吉備勢力を武力で制圧するのは難しく、何らかの交渉を続けていたのだろう。
最も考えられるのは、鉄の交易権などを交渉材料にして、吉備勢力を抑えた、若しくは味方に引き入れたのではないか。
つまり、奈良盆地での不戦とお互いの勢力を認め合うという講和が成り立っていた。
その後の前方後円墳の成立にも関わる重要な関係が成立した。

3)孔舎衙の戦いで敗退したが、迂回して再チャレンジ

吉備での講和が成った後、現大阪南方面(日下町付近)に侵攻したが敗れた。
この対抗勢力は、生駒山を東に越えたすぐ近くに陣取る地場の長髄彦である。長髄彦は、既に東征していた物部氏勢力の戦い方などを参考にして、鉄製武器も使って強かったのだろう。

しかし、めげない神武は南に迂回して南の紀の川(吉野川)をさかのぼり、宮滝付近で北転し宇陀を通って、奈良盆地南に侵攻した。

侵攻ルートは次項(創作された熊野ルート)に詳述。

4)奈良盆地に進軍開始
奈良盆地攻略は、先ずは、吉野川沿いの各勢力を味方につけてから(7月)、次のような段階を経て進軍して、奈良盆地を制圧していった。
①吉野、宇陀など南部を行ったり来たりしながら、磯城、葛城、磐余の各勢力を制圧し、協力関係築く。8月から10月の間。
②最も手ごわい、北部に陣取る長髄彦勢力と対決する。今度は饒速日(物部)の協力を得て勝利。11月から戦闘開始。
翌年2月から、山辺の道沿いの抵抗勢力(土蜘蛛)を排除する。この勢力は吉備勢力の北方すぐに位置しており、吉備の直接的ではないにしろ影響下にあったと思われる。
④これら抵抗勢力を葛城に押し込める。
⑤同年3月に橿原宮造営を決意。
  約一年後の、1月1日に即位。(辛酉革命に則り、推古朝から1260年前とした)

※特徴的なのは、三輪山周辺の出雲勢力と纏向周辺の吉備勢力と武力衝突した形跡がない。
吉備勢力とは先に吉備で対峙して、鉄交易などで協力関係を築いていたと思われるので、奈良盆地侵攻に際して、戦う必要が無くなっていた。

出雲勢力は、既に国譲りで配下に収めていた。又、その自然信仰的な広がりは広く根付いており、それを利用した占領政策をとることとしていた。

※倭国(やまとこく)
奈良盆地に入り磯城勢力と戦う際に、「倭(やまと)の国の磯城邑」という表現が出てくる。その後、戦後の論功行賞として、椎根津彦に「倭国造(やまとくにみやつこ)、大倭国造」を与えている。倭国造は葛城国造と同列で、倭は一地方の呼び名である。
その後、漢字表現が、「倭」から「大和」になったが、奈良盆地の一つの地方であることに変わりはない。

律令制が敷かれた時期から、この奈良地方全体を、大倭国→大倭→大和と表現するようになった。
更に、現在、奈良盆地をやまと盆地と称したり、神武から始まる政権をヤマト王権、初期ヤマト王権、日本列島をヤマトの国、日本は大和などなど、いろいろな思入れがある表現が溢れて、見る人聞く人を惑わしている。弥生時代と古墳時代などの時代区分も同様である。
地域名と時代名に思入れを入れずに表することは、人を惑わさずに実相を知ってもらう方法である。

5)神武は武闘派、政治力はどうか
神武は戦いには勝利し、橿原の宮を作り、論功行賞を行ったと伝わっているだけで、戦後、奈良盆地をどう支配していったのか伝わっていない。
つまり、実際の政治は先に居た国軍的役割の物部氏と、ずっと付き添ってきた親衛隊的役割の大伴氏(道臣命)に任せていたのではないか。
故に、日本書紀では、橿原の宮でどのような政治を行ったかの記述が出来なかった。
道臣命(後の大伴氏)は築坂邑(現鳥屋町)に宅を与えられたとある。

日本書紀神武巻の最後に、唐突気味に、神武と並んで伊邪那岐、大己貴大命、饒速日が日本(秋津洲)を賛美する一文が載っている。これは、神武が彼らと同等レベル以上の存在であると位置づけたかったのだろう。

古事記では、神武亡き後の相続争いを暗示するような歌と記述で、日本書紀のように国家(秋津洲)を論じていない。

<<                                     

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました