第6章 吉野逃避と壬申の乱、天武即位

第6章 吉野逃避と壬申の乱、天武即位
19.大津京で律令体制推進
大津は交通の要衝
西の瀬戸内海側から攻め込まれても、日本海にも、東海地方にも、奈良地方にも逃げられます。

百済人集落がすぐ北
白村江の戦いで敗れ、大量の百済人が大津京の北側に集落を作りました。

渡来人は官僚に登用
百済人は優秀で漢文、律令に精通していたので、王権の実際の行政を取り仕切る官僚にとなって活躍しました。
白村江で敗れ百済も崩壊したが、百済人が多くやって来て律令国家建設に役立ちました。わざと負けて百済人を移住させたのではないかという説もあります。

20.吉野に夫大海人皇子と逃げる
大友皇子に執着する天智
白村江での敗北以降、大海人皇子は兄天智が逃げ帰り、大津京に籠もったのに愛想を尽かしていました。律令制の実現には同意するところですが、鎌足との一派を頼るだけです。
そして、天智の思いは後継者を息子大友にする事に集中して、実力者である大海人皇子を亡き者にする機会をずっと探っていました。

鎌足の死
そんな中、鎌足が亡くなります。天智は最も頼りにしていた鎌足に最高の地位を与え、藤原姓まで与えました。天智は自らも病の身ですので、なんとしても早く、大友皇子を即位させたいと謀りました。

吉野逃避行
大海人皇子を呼び、「後事を託す」と言い、返答次第で殺そうという策略です。大海人皇子は感づいて出家して、二日後には”さらら”と皇子たちとともに吉野に逃げています。
大海人皇子と“さらら”は、後ろから天智勢が追ってくる中、逃げに逃げて吉野宮に入り一息つきました。大津皇子から飛鳥の島宮を経由して吉野まで、約100km弱の道のりをたった二日間で逃げ切ったとあります。10歳の草壁皇子、生まれたばかりの忍壁だけを連れていました。
本当にできたのでしょうか?馬を使えば可能かもしれませんが誇張がありそうです。
このときに、“さらら”は、もう天智政権側に戻るところはない、大海人皇子とずっと一緒に居るのだ、と固く想ったでしょう。
天智側の執拗な大海人皇子への敵意を受けて、父天智への失望は反旗に変わりました。幼いころから、謀略、謀殺が繰り返されてきた周りの環境と合わせ、“さらら”は暴力的な解決策を受け入れる性格に変わっていった可能性があります。
「やられたらやり返す」です。

21.吉野で先祖を学び、味方を増やす
勝手神社で五節舞
吉野宮と吉野川を挟んだ南側には吉野山があります。その中腹に勝手神社があり、創建は孝安6年(西暦320年頃と推測)と伝わります。大海人皇子は踊りなどが好きで、この境内で後に大嘗祭、新嘗祭で踊られる「五節舞」が披露されました。

国栖人を味方に付ける
神武東征の際に、吉野地場(国津)の国栖人が帰順して、その後の壬申の乱でも活躍したと伝わります。応神が吉野行幸した際には甘酒を献上して踊りました。
吉野川沿いにある浄御原神社は、吉野宮より北上した処にあり、天武が祭神です。
ここで毎年、国栖奏が奉納されています。

役小角が情報戦を制す
役小角は634年生まれでこの頃は30台です。既に吉野宮で斉明が水の祭祀を行ったときなどは、役小角が既に吉野山で修験道の修行を行っていたので、”さらら”とは旧知の間柄だったようです。
修験者は各地に拡がり、大友皇子側の情報に精通していました。

22.壬申の乱では、九州と同様に天照に戦勝祈願
壬申の乱の行軍ルート

天智が亡きあと、大海人と大友が皇位を巡って争いました。

天地側では5人の取り巻きが政権を握りました。先ずは天智の葬儀のために人を動員した陵墓の造成です。
大海人皇子はこれは兵を固めて吉野に攻め入る前触れだろうと考え、先に大友皇子を攻めようと決意しました。

吉野を脱出して東国などから兵を集めて不破の関を固め、東と南から大津皇子を攻めました。

最終的に瀬田の唐橋での戦闘に勝利して、大友皇子は自死しました。

これで、大海人皇子から天武天皇になります。

後の時代、聖武天皇は壬申の乱の行軍跡をなぞって行幸しています。天武を偲ぶ旅だったのでしょうか。

「やられたらやり返す、たとえ父親でも」
“さらら”は、夫大海人への父天武の仕打ちに我慢ならず、又、大友の母の身分は低く、王権の真ん中で育った身としては大友に皇位を継ぐ資格がないと思っていました。
祖父を殺され、母を追いやった父への反感に更に火がついたのではないでしょうか。

大友との皇位争いに勝つためには、味方の人心を取りまとめる中心的な役割を果たすのは自分であると強く意識していました。
高市皇子のように立派な成人、武人もいる中、大友側の東を遮る不破の関と共に、補給拠点として重要な桑名で、幼い者たちを守りながら、後方支援に徹しました。

又、勝因の一つに、斉明の頃からの協力者である役小角が支援したと伝わります。

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