付記6 原万葉集 勝手分析
原万葉集の特徴
・冒頭の歌は雄略大王で、この世は全て大王である自分のものだと強調しています。
雄略は葛城山で素戔嗚系の一言主(素戔嗚系)に出会い一緒に遊ぶという故事は、ブロ ッケン現象を元にしていますが、一人が二人に分かれ又戻ることで、雄略自身を現人神 化しています。
更に、雄略が吉野宮に出かけ乙女に出会い、歌った歌「あぐらいの 神の御手もち 弾 く琴に舞する女 常世にも」は、台座に座る神である私・・・と歌っています。
つまり、原万葉集の冒頭で、大王は神であると宣言してこの歌集を始めています。
※日本書紀では、倭健が東征の際、現宮城県七ヶ浜町で、地場の蝦夷に何者と問われ、現 人神(景行)の皇子と答えています。これは天武朝の創作かどうか課題です。
・舒明は香久山で国見して、この自分が治める秋津洲(日本)は素晴らしいと自賛してい ます。鴎立ち立ちは、当時の奈良盆地は湖であったことが窺えます。
・「やすみ(八隅)しし・・(国の隅々までを治める)・・」と天皇を賛歌する歌が、
3,36,38,45,50,52番と6首もあります。
・5,7,8,10,20,2127,28,29,46,49番など、都、皇子、皇女などを懐う歌が多い。
・天智のわけのわからない歌2首 13,14を除くと天皇を讃える歌ばかりです。13,14番は 比喩を弄しています。深堀りすれば意味が出てくるかもしれません。
・“さらら”、天武、額田大王、天智、柿本人麻呂の五人で30首、半分以上を占めます。
・簡単にまとめると、“さらら”は香久山で歌い、天武は吉野と遊び恋の歌、額田は自然と 恋と哀惜を込めた相聞歌、天智は意味不明、人麻呂は天皇讃歌、となります。
・25番と26番はほぼ重複しているので、どちらかを間違えて掲載したのかもしれません。
・9番は難歌中の難歌です。色々な解釈があり様々な本が出版されています。
関係者7人の歌一覧
雄略、舒明、“さらら”、天武、額田大王、柿本人麻呂、倭健(古事記より)
・雄略天皇の歌 1首・・・お前も何もかも、全ては俺のものだ!
第1巻1番歌 篭もよ み篭持ち 堀串もよ み堀串持ち この岡に 菜摘ます子 家聞かな 告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて 我れこそ居れ しきなべて 我れこそ座せ 我れこそば 告らめ 家をも名をも
・舒明天皇の歌 1首・・・なんとも良い国だこと
第1巻2番歌 大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は
・“さらら”の歌 1首・・・良き国になるよう見守ってください
第1巻28番歌 春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山
・天武の歌 4首・・・吉野関連3首、吉野が原点
25番は天皇謹製、26番は或る本の歌となっているがほぼ同じ。
第1巻21番歌 紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも
第1巻25番歌 み吉野の 耳我の嶺に 時なくぞ 雪は降りける 間無くぞ 雨は振りける その雪の 時なきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつつぞ 来し その山道を
第1巻26番歌 み吉野の 耳我の山に 時じくぞ 雪は降るといふ 間なくぞ 雨は降るとい ふ その雪の 時じきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつ つぞ来る その山道を
第1巻27番歌 淑き人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よ良き人よく見
額田大王の歌 7首・・・自然風景と君などを組み合わせた良歌
第1巻7番歌 秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の宮処の仮廬し思ほゆ
第1巻8番歌 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
第1巻9番歌 莫囂円隣之大相七兄爪謁気我が背子がい立たせりけむ厳橿が本(難歌)
第1巻16番歌 冬こもり 春さり来れば 鳴かずありし 鳥も来鳴きぬ 咲かずありし 花も 咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉 を見ては 黄葉をば 取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山吾は
第1巻17番歌 味酒 三輪の山 あをによし 奈良の山の 山の際に い隠るまで 道の隈 い 積もるまでに つばらにも 見つつ行かむを しばしばも 見放けむ山を 心 なく 雲の 隠さふべしや
第1巻18番歌 三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや
第1巻20番歌 あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
天智の歌 3首・・・比喩が判りずらい(判らない)
第1巻13番歌 香具山は 畝傍を愛しと 耳成と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき
第1巻14番歌 香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印南国原
第1巻15番歌 海神の豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけくありこそ
柿本人麻呂の歌 15首・・・天皇讃歌、技巧派、48番語調よい
第1巻29番歌 玉たすき 畝傍の山の 橿原の ひじりの御代ゆ [或云 宮ゆ] …
第1巻30番歌 楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ
第1巻31番歌 楽浪の志賀の [一云 比良の] 大わだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも
第1巻36番歌 やすみしし 我が大君の きこしめす 天の下に 国はしも…
第1巻37番歌 見れど飽かぬ吉野の川の常滑の絶ゆることなくまたかへり見む
第1巻38番歌 やすみしし 我が大君 神ながら 神さびせすと 吉野川…
第1巻39番歌 山川も依りて仕ふる神ながらたぎつ河内に舟出せすかも
第1巻40番歌 嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳の裾に潮満つらむか
第1巻41番歌 釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈るらむ
第1巻42番歌 潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を
第1巻45番歌 やすみしし 我が大君 高照らす 日の皇子 神ながら 神さびせすと…
第1巻46番歌 安騎の野に宿る旅人うち靡き寐も寝らめやもいにしへ思ふに
第1巻47番歌 ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し
第1巻48番歌 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ
第1巻49番歌 日並の皇子の命の馬並めてみ狩り立たしし時は来向ふ
倭健の思国歌(くにしのびうた=望郷の歌)・・・古事記 3首
尾張(おわり)に ただに向へる 尾津の崎なる 一つ松 あせを 一つ松 人にありせば 太刀(たち)はけましを きぬ着せましを 一つ松 あせを
大和(ヤマト)は 国のまほろば たたなづく 青垣(あおがき) 山隠(やまごも)れる ヤマトしうるはし
命の またけむ人は たたみこも 平群(へぐり)の山の 熊白檮(くまかし)が葉を 髻華(うず)に挿せ その子
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